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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)2926号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人権田隆弁護人小倉徳太郎の上告趣意第一点(第一点だけよりない)について。

被告人又は証人の供述記載又は供述が不可分のものである場合はその一部を分離してその供述全体の趣旨と異なる意味の事実認定の資料に供することは違法ではあるが(昭和二三年(れ)第一四五五号、同年一二月二三日第一小法廷判決参照)、可分の場合はその可分の部分を各独立して事実認定の証拠に供し得ることは素より適法当然の措置である。そして、本件において原審が証拠に採った第一審公判調書における被告人の供述記載並びに原審公判廷における被告人の供述は、その供述記載及び供述中原判決認定事実に同旨の部分のみを採って証拠に供しておるものであることは原判文に照し明らかなところである。そして右第一審並びに原審各公判調書を精査すると何れも原判示事実同旨の部分は之を他の部分と分離することの可能であることが十分に認められる。そして之に依って見ると所論原判示第二の強盗行為につき被告人が渡辺昭一、横井昭治と共謀の上被告人は見張を担任したものである事実を認めることができるのである。所論は右各公判調書中より原判決が採証していない部分を採って論難するものであって、結局原審の証拠の取捨判断を争いもって原審の共謀の事実認定を非難するものであって上告適法の理由とならないものである。又所論後段の「それ故右被告人の見張りを強盗の共同正犯と断ずるには右見張りが通謀に基く実行行為の一部なることを説明すべきである」との点については、原判決は「被告人渡辺昭一同権田隆は右横井昭治と共謀の上……被告人隆は同家表入口にて見張りを為し、横井及昭一は其所持する日本刀及軍刀を右服部に突付け金を出せと申向けて脅迫し、同人の抵抗を抑圧した上云々強取し」と判示しているのであるから、原判決は毫も所論の点に関する説示として欠くるところはないのである。論旨はすべて採用することができない。

尚被告人権田隆提出の上告趣意書は、法定期間経過後のものであるから之に対しては判断を与えない。

被告人山田康司弁護人小倉徳太郎の上告趣意第一点(第一点だけよりない)について、

所論はすべて前掲被告人権田隆に関する上告趣意と同旨に帰着するものであって、即ち原判決認定の第三の(一)に関する被告人の共謀の事実はその挙示する証拠に依って十分に之を認めることができるのであるから、論旨は採用することができない。

被告人伊藤政秋弁護人加藤謹治上告趣意第一点について。

記録を見ると、所論堀内斎判事が被告人の保釈決定に関与していることは所論のとおりである。しかし旧刑訴第二四條第八号は上訴により不服を申立てられた裁判又はその基礎となった取調に関与した場合をいうのであるから、所論保釈決定に関与した場合を含まないことは論議を要しないところである(昭和二十四年新(れ)第一〇四号昭和二十五年四月十二日大法廷判決参照)。論旨は理由がない。

同第二点について。

所論は原審の量刑を不当であると主張するものであって、刑訴応急措置法第一三條第二項により上告適法の理由とならないものである。

仍って、刑訴施行法第二條旧刑訴第四四六條に従い主文のとおり判決する。

此の判決は裁判官全員一致の意見に依るものである。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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